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朝日新聞に四国巡拝センターが紹介されました。

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朝日新聞 2008年12月19日夕刊
[地方版は20日朝刊]

お寺や神社をめぐる「寺社巡拝」が、おとなたちを引きつけている。殺伐と暗い時代だからこそ、心静かに自分と対話する時間がほしくなるのか。こうした流れをとらえ、寺院と神社との境を取り払った新しい巡拝ルートを提案する動きもあらわれた。普通の観光にはない精神的な意味合いが加わるため、自己を見つめる機会にぴったりということらしい。(星野学)

巡拝といえば四国八十八カ所巡り。JTB西日本では、5年ほど前から利用客の要望で始めた1泊2日や日帰りでのお遍路バスツアーが人気だ。
同社広報室によると、半年ごとに千人単位の客が集まっており、今年下半期は昨年の1割増だという。60~70代が9割を占める。

友人同士よりも1人での申し込みが多いというから、気軽な観光気分ではなさそうだ。「つれあいを亡くされたり退職されたり、人生を見つめ直す年代の方々です。初対面でも同じ目的を持つ人と一緒に歩めることが人気の理由でしょう」

10年でほぼ倍増
お遍路専門の旅行会社、四国巡拝センター(高松市)では、遍路を経験した先達運転手のタクシーで寺を巡るプランが、この10年でほぼ倍増した。今年は約1千人が利用している。

親しい数人のグループがタクシーで移動し、宿泊場所はホテル。お遍路さんがときに野宿し、「接待」と呼ばれる沿道の人々からの施しで歩みをつないだこととつい比べてしまうが、今はタクシー利用者にこそ悩みを抱えた人が目立つと、山上博美センター長は言う。

身内を亡くした人。「仕事で泣かせた人へのざんげ」と語った元会社経営者……。巡拝者には事情を問わないのが礼儀だが、問わず語りの言葉は重い。

「年間1万人いる歩き巡拝ツアーヘの参加者の方が、健康志向が強いです」と山上さん。

先達運転手のひとり、高松市の稲崎博さん(59)は、、父を亡くした9年前に「思い立って供養にと」八十八カ所巡りを始めた。これまでに112回巡拝し、「欲得で何かを成し遂げたいと願うことに価値はないと分かってきました」と語る。

年間20組ほどの客を案内する。「亡くなったご主人の思い出と一緒に、というような、後悔の念を癒やそうと回る年配者が多いです」。だから稲崎さんは、父を思い寺を巡ったかつての自分を思いながら、客に語りかけるという。「『人は結局死ぬのだから、後悔しても仕方がない』。そういう気持ちになれるよう、対話をしながら、こんなふうに生きてみては、と伝えるようにしています」

「現代の巡拝は、日常生活で自己存在の揺らいだ人が、『他界』を作り出し自分をとらえ直す機会になっています」。『巡礼の文化人類的研究』(古今書院)を書いた浅川泰宏・埼玉県立大講師はそう言う。宗教という非日常な性格をまとうことで、巡拝は日常的な風景をも「他界」に見せてくれる。

自身も遍路を重ねる浅川さんは、近年、巡拝者が自身の思いや体験を語りたがるようになってきた、と感じている。

「生きることへの漠然とした不安から巡拝することが多い。理由があいまいでなぜ巡拝なのかも不明確な人が増えたからこそ、巡拝で得た具体的な手応えを語りたくなるようです」

手応えとは何だろう。

「自然と触れあえた感動を語る人もいれば、接待を通じた心の交流を語る人もいます。体を動かし、他者の心に触れつつ、『生き続けなければ』という心境に到達する。巡拝は『擬死再生』の場とも言えます」

新ルートを創設

こうした人気ぶりを見て、宗教界は今年、新たな巡拝ルートの創設に動いた。伊勢神宮(三重県伊勢市)のほか、東大寺(奈良市)、石清水八幡宮(京都府八幡市)など近畿地方の150社寺が共同して「神仏霊場会」を結成したのである。

「お寺も神社も区別なく訪ね歩こう」と呼びかけ、公式ガイドブック『神と仏の道を歩く』 (集英社新書)も出した。江戸時代に庶民が出かけた「お伊勢参り」をモデルに、各地の風光を楽しみながら、寺社が持つ神聖な雰囲気も味わう〝ひとときの非日常〟を提案する。

同会の会長を務める森本公誠・東大寺長老は語る。

「宗教的な雰囲気を体感することで、魂の浄化に結びつけてほしいのです。殺伐とした事件が相次ぐ中、宗教観の違いを超えて日本人の心情を穏やかにしたいという、宗教者の意思表示でもあります」

- 朝日新聞 2008年12月19日夕刊 [地方版は20日朝刊] -

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