四国こんぴら歌舞伎大芝居

四国こんぴら歌舞伎大芝居

2024年第37回 四国こんぴら歌舞伎大芝居

旧金毘羅大芝居は、天保6年(1835)に建築された現存する日本最古の本格的芝居小屋である。

昭和45年(1970)、学術的かつ文化的価値を認められ国の重要文化財の指定を受け、昭和47年から4年間の歳月をかけて現在の場所に移築復原し、江戸時代の姿のそのままに蘇った。

「四国こんぴら歌舞伎大芝居」は、昭和60年(1985)6月の初公演以来、四国路に春を告げる風物詩として毎年開催され、町をあげて取り組む地域振興のイベントとして、全国からの歌舞伎ファンを魅了し続けている。

平成15年(2003)、旧金毘羅大芝居では、耐震構造補強工事(平成の大改修)が行われ、併せて長年、観劇の妨げとなっていた4本の鉄柱も取り除かれた。さらに調査の際、「ブドウ棚」と「かけすじ」の痕跡が発見され、これを復原。旧金毘羅大芝居は細部にわたり、江戸時代の情緒あふれる芝居小屋を再現することができました。

また、舞台と客席が一体化となった劇場空間に、復原された仕掛けを活用する事でより一層、上演される演目の幅も広がりを見せている。

  • 金丸座
  • 金丸座

演目解説

こんぴら春の風物詩として毎年人気の「四国こんぴら歌舞伎大芝居」。ここではその演目の解説をいたします。

一、伊賀越道中双六 沼津(いがごえどうちゅうすごろく ぬまづ) 一幕

東海道を旅する呉服屋十兵衛は、沼津の街道で出会った雲助の平作から頼み込まれ、荷物を預けます。しかし、年老いた平作の足取りはおぼつかず、木の根につまづき足の爪を剥がしてしまい、十兵衛は印籠の薬で手当てをします。先を急ぐ十兵衛でしたが、平作の娘お米に見惚れて平作の家に立ち寄ることに。その夜、皆が寝静まった頃、お米が印籠を盗もうとしたことから、十兵衛は驚くべき真実を知り……。
前半の可笑しみのある旅の雰囲気が一変、後半は親子の悲しい運命が明らかになります。
武士の仇討ちに巻き込まれた、庶民の悲劇と人情が時代を超えて胸を打つ、義太夫狂言の名作をご堪能ください。

二、羽衣(はごろも) 長唄囃子連中

駿河の国、三保の松原。松の木にかかった美しい羽衣を見つけた漁師の伯竜は我が家へ持ち帰ろうと手に取ります。そこへ美しい天女が呼び止め、羽衣を返して欲しいと頼むのでした。伯竜は衣を返し、その代わりに天女の舞を望みます。優雅な舞を見せた天女は、やがて天へと昇って行くのでした。 有名な「羽衣伝説」を題材とした長唄の舞踊で、優雅で幻想的な美しさをご堪能ください。

一、松竹梅湯島掛額(しょうちくばいゆしまのかけがく) 二幕

ここは本郷駒込の吉祥院、「紅長(べんちょう)」の名で知られる紅屋長兵衛たちが木曽の軍勢から逃れるために避難しています。紅長は、居合わせた八百屋の娘お七が、小姓の吉三郎との叶わぬ恋に嘆く様子を見て慰めます。そこへやってきたのはお七を愛妾にと望む源範頼の命を受けた釜屋武兵衛と長沼六郎。紅長はお七を詮議から逃すため隠しますが……。

吉祥院の騒動からしばらく経った雪の宵。愛しい吉三郎に会いたい一心のお七は、閉じられた木戸を開けるために火の見櫓へ上り……。

「吉祥院お土砂の場」は、かけると身体がぐにゃぐにゃになるという “お土砂”という粉を使って、紅長がお七の恋を手助けしようと、面白おかしく活躍する姿がみどころ。がらりと変わり、次の「四ッ木戸火の見櫓の場」では、降りしきる雪のなか、「人形振り」の演技でお七が恋に一途な思いを表現します。趣向あふれる二場面をご覧いただきます。

二、教草吉原雀(おしえぐさよしわらすずめ) 長唄囃子連中

江戸の吉原仲之町へやって来たのは男女の鳥売り。二人は生き物を放つ放生会の由来や廓の間夫と女郎の様子を踊ってみせます。そこへ鳥刺しも加わり賑やかになりますが、鳥刺しは鳥売りの様子を怪しみます。鳥刺しが詰め寄ると、鳥売りの男女は雀の精の本性を顕し……。

葭切の異名をもつ「吉原雀」を吉原の遊客に見立てて、鳥売りの男女がその様子を艶やかに踊る長唄の舞踊です。今回は鳥刺しが絡んでの、大時代で派手な演出をお楽しみください。

出演者

四国こんぴら歌舞伎大芝居は、当世の人気役者による公演が行われ、全国から集まる歌舞伎ファンを魅了しています。

◆ 松本 幸四郎(まつもと こうしろう) 十代目 高麗屋

1973年1月8日生まれ。松本白鸚の長男。79年3月歌舞伎座『侠客春雨傘』で三代目松本金太郎を名のり初舞台。81年10・11月歌舞伎座『忠臣蔵 七段目』の大星力弥ほかで七代目市川染五郎を襲名。94年4月歌舞伎座にて名題昇進。2018年1・2月歌舞伎座で十代目松本幸四郎を襲名。舞踊の松本流家元を兼ねる。四国こんぴら歌舞伎大芝居には10年ぶり5回目の出演 となる。

◆ 中村 雀右衛門(なかむら じゃくえもん) 五代目 京屋

1955年11月20日生まれ。四世中村雀右衛門の次男。61年2月歌舞伎座『一口(ひとふり)剣(けん)』の村の子明石で初代大谷広松を名のり初舞台。64年9月歌舞伎座『妹背山婦女庭訓』のおひろで七代目中村芝雀を襲名。2016年3月歌舞伎座『鎌倉三代記』の時姫と『祗園祭礼信仰記 金閣寺』の雪姫で五代目中村雀右衛門を襲名。四国こんぴら歌舞伎大芝居には7年ぶり9回目の出演となる。

◆ 中村 鴈治郎(なかむら がんじろう) 四代目 成駒家

1959年2月6日生まれ。四世坂田藤十郎の長男。67年11月歌舞伎座『紅梅曾我』の一萬丸で中村智(とも)太郎(たろう)を名のり初舞台。90年名題適任証取得。95年1月中座『封印切』の忠兵衛ほかで五代目中村翫雀を襲名。2015年1・2月大阪松竹座『廓文章』の伊左衛門ほかで四代目中村鴈治郎を襲名。四国こんぴら歌舞伎大芝居には8年ぶり6回目の出演となる。

◆ 中村 亀鶴(なかむら きかく) 二代目 八幡屋

1972年6月18日生まれ。初世中村亀鶴の長男。父方の祖父は四世中村富十郎、祖母は初世中村鴈治郎の娘の中村芳子(よしこ)。76年12月南座『時雨(しぐれ)の炬燵(こたつ)』の勘太郎で渡辺芳彦の名で初舞台。90年国立劇場第10期歌舞伎俳優研修修了。91年1月伯父の五世中村富十郎門下となり、中村芳彦を名のる。93年4月富十郎の部屋子となる。2001年11月歌舞伎座『戻駕(もどりかご)色相(いろにあい)肩(かた)』の 禿(かむろ)で二代目中村亀鶴を襲名。09年11月より四世坂田藤十郎一門となる。四国こんぴら歌舞伎大芝居には8年ぶり6回目の出演となる。

◆ 中村 壱太郎(なかむら かずたろう) 初代 成駒家

1990年8月3日生まれ。中村鴈治郎の長男。祖父は四世坂田藤十郎。母は吾妻徳穂。95年1月中座〈五代目中村翫雀・三代目中村扇雀襲名披露興行〉『嫗(こもち)山姥(やまんば)』の一子公(きん)時(とき)で初代中村壱太郎を名のり初舞台。2014年9月日本舞踊吾妻流の七代目家元を襲名し、吾妻徳陽を名のる。四国こんぴら歌舞伎大芝居には8年ぶり4回目の出演となる。

◆ 大谷廣太郎(おおたに ひろたろう) 三代目 明石屋

1992年6月10日生まれ。大谷友右衛門の長男。祖父は四世中村雀右衛門。96年11月歌舞伎座『土蜘』の石神で青木政憲の名で初お目見得。2003年1月歌舞伎座『助六』の禿(かむろ)で三代目大谷廣太郎を襲名し初舞台。四国こんぴら歌舞伎大芝居には7年ぶり3回目の出演となる。

◆ 市川 染五郎(いちかわ そめごろう) 八代目 高麗屋

2005年3月27日生まれ。松本幸四郎の長男。祖父は松本白鸚。07年6月歌舞伎座『侠客春雨傘』の高麗屋齋吉で藤間齋の名で初お目見得。09年6月歌舞伎座『門出(かどんで)祝(いおう)寿連(ことぶきれん)獅子(じし)』の童後に孫獅子の精で四代目松本金太郎を名のり初舞台。18年1・2月歌舞伎座で八代目市川染五郎を襲名。四国こんぴら歌舞伎大芝居には初出演となる。

◆ 中村 吉之丞(なかむら きちのじょう) 三代目 播磨屋

1967年生まれ。78年7月歌舞伎座『加賀見山(かがみやま)再岩藤(ごにちのいわふじ)』の丁稚で森島啓介の名で初舞台。81年4月中村吉右衛門の部屋子となり、歌舞伎座『元禄忠臣蔵 最後の大評定』の吉千代ほかで中村吉男を名のる。94年4月三代目中村吉之助と改め、歌舞伎座『勧進帳』『熊谷陣屋』の四天王で名題昇進。95年9月二代目中村吉之丞の芸養子となる。16年9月歌舞伎座『一條大蔵譚』の八 剣勘解由などで三代目中村吉之丞を襲名。四国こんぴら歌舞伎大芝居には8年ぶり8回目の出演となる。

◆ 松本 錦吾(まつもと きんご) 三代目 高麗屋

1942年4月12日生まれ。二世松本錦吾の長男。49年2月大阪歌舞伎座『吉田屋』の禿(かむろ)で松本忠を名のり初舞台。53年八世松本幸四郎(初世白鸚)の内弟子となり、松本錦彌を名のる。65年名題昇進。同年2月東京宝塚劇場『鬼の少将夜長話』の家従・弘之で三代目松本錦吾を襲名。88年幹部昇進。四国こんぴら歌舞伎大芝居には13年ぶり5回目の出演となる。

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