第一部
『隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)』
浅草聖天町に住む願人坊主の法界坊は、浅草龍泉寺の釣鐘建立の勧進をして歩いていますが、折角集めた金を道楽や飲み食いに使ってしまう生臭坊主。永楽屋の娘おくみに恋慕していますが、おくみは手代の要助と恋仲なので、相手にされません。その要助は、実は京の公家吉田家の嫡男松若で、野分姫という許婚がいる身でしたが、紛失した御家の重宝「鯉魚の一軸」を探し出し、御家の再興を目指して、姿を変えて機会をうかがっていたのでした。法界坊は要助を陥れようと悪事に加担し追い詰めますが、もとは吉田家の家来筋であった道具屋甚三の機転により、あえなく失敗します。怒りのおさまらない法界坊は、野分姫をも無理やり口説こうとして…。
法界坊は、盗みも人殺しもする悪党ながらも、美しい娘がいると追い掛け回したりと、人間味にあふれどこか憎めない愛嬌があります。舞踊「双面水照月」では、法界坊と野分姫の合体した霊を一人で演じ分けるのがみどころです。世話物の人気狂言をお楽しみください。
第二部
一、『寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)』
能楽の『翁』を題材とし、天下泰平、五穀豊穣、国土安穏を祈る荘重な舞踊です。まず、翁と千歳が格調高く厳かに舞い、新たな春を迎えるにふさわしい雰囲気を醸し出します。続いて、三番叟が鈴を手にすると軽妙洒脱な踊りを見せ、五穀豊穣を祈ってめでたく舞い納めるのでした。前半は翁の荘重な踊り、後半は三番叟の躍動感に満ちた踊りがみどころの舞踊です。
二、『襲名披露 口上(こうじょう)』
裃姿の俳優が舞台に並び、皆様に二代目松本白鸚、十代目松本幸四郎の襲名披露のご挨拶を申し上げます。裃姿の俳優が列座する華やかな一幕です。
三、『源平布引滝 義賢最期(よしかたさいご)』
平家全盛の時代。敗死した源義朝の弟で平家方に味方した木曽義賢は病で館に引き籠っていました。そこへ百姓九郎助とその娘の小万が、小万の夫である奴折平の暇乞いを願い出るためにやって来ます。しかし、娘の待宵姫と恋仲となっている折平を源氏の武将多田蔵人と見抜いていた義賢は、源氏再興の志を明かします。そこへ、平清盛の使者が白旗詮議にあらわれ…。義賢がみせる「戸板倒し」「仏倒し」など迫力あふれる立廻りがみどころの義太夫狂言の名作をお楽しみください。