◆ 松本白鸚(まつもと はくおう)
二代目 高麗屋
初世松本白鸚の長男。昭和21年に二代目松本金太郎を名のり初舞台、昭和24年に六代目市川染五郎を襲名し、昭和56年に九代目幸四郎を襲名。平成30年1月、2月に歌舞伎座で息子、孫と共に高麗屋三代襲名披露を行い、二代目白鸚を襲名。立役として時代物、世話物、新歌舞伎、舞踊など幅広い分野で数々の当り役を持つ。中でも『勧進帳』の弁慶は屈指の当り役のひとつで、平成22年8月には52年かけて全国47都道府県で上演するという偉業を達成。1000回公演は東大寺大仏殿前にて奉納上演。上演回数は1100回以上、今なお更新し続けている。この他にも時代物では『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助、『菅原伝授手習鑑』の松王丸。所作事では『積恋雪関扉』の関兵衛、『素襖落』の太郎冠者。近年は『魚屋宗五郎』の宗五郎、『盲長屋梅加賀鳶』の道玄、『筆屋幸兵衛』の幸兵衛といった世話物も数多く手がけ、独自の境地を示している。同時に、長年ミュージカルの舞台でも活躍し、『ラ・マンチャの男』では主演を半世紀にわたり演じ、今年、上演1300回を達成した。平成17年紫綬褒章、平成21年日本藝術院会員。文化功労者。
四国こんぴら歌舞伎大芝居には9年ぶり4回目の出演。
◆ 松本幸四郎(まつもと こうしろう)
十代目 高麗屋
二代目松本白鸚の長男。昭和54年に三代目松本金太郎を名のり初舞台、昭和56年に七代目市川染五郎を襲名。平成30年に高麗屋三代襲名として、父の前名の幸四郎を十代目として襲名。清新な美貌とすらりとした風姿が生きる古典の二枚目や女方はもとより、演じる役柄は幅広い。殊に近年は『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助、『熊谷陣屋』の熊谷直実、襲名披露では『勧進帳』の弁慶など父祖の当り役にも挑み、成果を挙げている。また『女殺油地獄』の河内屋与兵衛や『恋飛脚大和往来』の忠兵衛など上方歌舞伎や和事にも積極的に取り組んでいる。さらには『江戸宵闇妖鉤爪』『陰陽師』など新作歌舞伎の上演にも情熱を注ぎ、評価を得ている。外部出演した劇団☆新感線の『アテルイ』から歌舞伎NEXT『阿弖流為』へと進化させるにとどまらず、フィギュアスケートと融合させた『氷艶―破沙羅―』、漫画「風雲児たち」を題材にした「三谷かぶき『月光露針路日本』風雲児たち」、さらに今年12月には喜劇王チャールズ・チャップリンの映画をテーマにした歌舞伎『蝙蝠の安さん』など、新しい世界を切り拓き、次代の歌舞伎の担い手として大きな期待が寄せられている。
四国こんぴら歌舞伎大芝居には6年ぶり5回目の出演。
◆ 中村雀右衛門(なかむら じゃくえもん)
五代目 京屋
昭和30年11月20日生まれ。四代目中村雀右衛門の次男。昭和36年2月歌舞伎座『一口剣』の村の子明石で大谷広松を名のり初舞台。昭和39年9月歌舞伎座『妹背山婦女庭訓』の御半下おひろで七代目中村芝雀を襲名。平成28年3月歌舞伎座『鎌倉三代記』の北条娘時姫ほかで五代目中村雀右衛門を襲名。可憐な姫君や町娘、つつましやかな腰元、凛とした武家の妻など、歌舞伎を彩る女性たちをその身で体現している。清楚な気品を漂わせながらも、襲名以降、艶やかさ、上品な風格も備わり、役を一つずつものにして立女方の本道を歩んでいる。
四国こんぴら歌舞伎大芝居には3年ぶり9回目の出演。
◆ 中村鴈治郎(なかむら がんじろう)
四代目 成駒家
坂田藤十郎の長男。昭和42年に初舞台の後、平成7年に五代目中村翫雀を襲名。平成27年1・2月に大阪松竹座で四代目鴈治郎を襲名。一年余りに及ぶ襲名披露興行では、家の芸である「玩辞楼十二曲」より、『廓文章』藤屋伊左衛門、『封印切』亀屋忠兵衛、『河庄』紙屋治兵衛、『引窓』南与兵衛後に南方十次兵衛を勤め、上方歌舞伎の大名跡継承の期待に応えた。一方で、松竹新喜劇の傑作『幸助餅』を歌舞伎として上演するという意欲的な姿勢をみせるなど独自の芸境がある。若々しい役から渋みのある役どころまで芸域の広さを持ち、今後の上方歌舞伎の担い手の一人である。
四国こんぴら歌舞伎大芝居に4年ぶり6回目の出演。
◆ 片岡亀蔵(かたおか かめぞう)
四代目 松島屋
昭和36年生まれ。五世片岡市蔵の次男。昭和40年、片岡二郎の名で初舞台。昭和44年、亀蔵を四代目として襲名。兄は片岡市蔵。目鼻が大きく立派な顔立ちは、まるで江戸時代の錦絵に出てくるような雰囲気。その風貌から敵役がよく似合い、『実盛物語』の瀬尾では、前半は赤っ面で憎々しさも見せつつ、後半は孫への情を滲ませた。コクーン歌舞伎、平成中村座の常連でもあり、他方では、その独自な個性から『釣女』醜女、『狐狸狐狸ばなし』のおそめなど可笑しみのある役でも欠かせず、脇で支える。
四国こんぴら歌舞伎大芝居には昨年に続き5回目の出演。
◆ 大谷廣太郎(おおたに ひろたろう)
三代目 明石屋
大谷友右衛門の長男。平成8年に初お目見得の後、平成15年に三代目廣太郎を襲名して初舞台。温和で飄逸な雰囲気が魅力で、歌舞伎座恒例の納涼歌舞伎の『弥次喜多』での旅館の亭主では持ち味を生かした役作りとなった。『盟三五大切』の虎蔵をはじめ世話物の鳶や男伊達に爽やかさがある。幸四郎が『勧進帳』の弁慶を初役で勤めた時以来、後見を任されるほどで幸四郎からの信頼も厚い。高麗屋の家とは親戚ということもあり、襲名には欠かせない花形の立役。
四国こんぴら歌舞伎大芝居には3年ぶり3回目の出演。
◆ 市川男寅(いちかわ おとら)
七代目 滝野屋
平成7年生まれ。市川男女蔵の長男。祖父は市川左團次。平成15年5月歌舞伎座『極付幡随長兵衛』の長兵衛倅長松と『梅雨小袖昔八丈』髪結新三の紙屋丁稚長松で七代目市川男寅を襲名し初舞台。平成26年の大学進学と同時に舞台出演が増え、役の一つひとつに丁寧に取り組まれている。女方も映える顔立ちで、『芝浜革財布』お君では初々しく健気な娘を演じた。南座顔見世『毛抜』では祖父、左團次の粂寺弾正に対し錦の前、スーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』では小栗二郎を勤め、今後の活躍が楽しみな存在である。
四国こんぴら歌舞伎大芝居には初出演。
◆ 松本錦吾(まつもと きんご)
三代目 高麗屋
二世松本錦吾の長男。昭和24年に初舞台の後、昭和28年に初世松本白鸚の内弟子となり松本錦彌を名のる。その後、昭和40年に三代目錦吾を襲名。同じく高麗屋の門弟の父は、女方として活躍したが、当代は時代物、世話物でも滋味のある立役を勤める。『仮名手本忠臣蔵 七段目』の九太夫や『籠釣瓶』の権八などでは欲深さを見せる一方で、『魚屋宗五郎』の父太兵衛では市井の人の悲しみや優しさを味わい深く演じる。長年、高麗屋一門を支える重鎮である。
四国こんぴら歌舞伎大芝居には9年ぶり5回目の出演。
◆ 市川高麗蔵(いちかわ こまぞう)
十一代目 高麗屋
日本舞踊家の二世花柳泰輔の長男。大伯父は八世市川中車。昭和37年に初舞台の後、昭和46年に初世松本白鸚の部屋子となり、市川百々丸を名のる。昭和56年に二代目市川新車を襲名後、平成6年に高麗蔵を十一代目として襲名。若い時から時代物の赤姫や娘役などの女方で本領を発揮するが、目鼻立ちがしっかりとしているので、若衆の二枚目もよく似合う。平成31年4月公文協の中央コース『菅原伝授手習鑑 加茂堤』では、初役の八重を演じ、過去には、斎世親王、苅屋姫を演じるなど幅広く活躍し、立役も女方もこなす、高麗屋一門にとって貴重な存在。
四国こんぴら歌舞伎大芝居には6年ぶり3回目の出演。
◆ 大谷友右衛門(おおたに ともえもん)
八代目 明石屋
昭和24年生まれ。四代目中村雀右衛門の長男。弟は現・中村雀右衛門。昭和36年2月歌舞伎座『勧進帳』の太刀持で二代目大谷広太郎を名のり初舞台。昭和39年9月歌舞伎座『ひと夜』の康二で八代目大谷友右衛門を襲名。ベテラン俳優として立役、女方、身分や境遇の異なる様々な役をこなし、一見して大歌舞伎育ちの品の良さと鷹揚さが目に留まる。『毛抜』の小野春道を持ち役とし、『天竺徳兵衛韓噺』の徳兵衛実父の主君佐々木桂之介、『義経千本桜 鳥居前』源九郎判官義経とことに殿様を演じて得難いものがある。
四国こんぴら歌舞伎大芝居には3年ぶり3回目の出演。